「検査を勧められたけど、何をされるのか不安」
「園や学校の先生から、発達検査を受けてみてはと言われた」
「WISC検査というものを勧められたけど、どんな検査なのかよくわからない」
初めて発達検査の話が出たとき、多くの保護者の方が不安を感じます。
「検査で悪いことがわかったらどうしよう」
「うちの子に何か問題があると決めつけられるのでは」という気持ちを抱く方も少なくありません。
私は児童・障がい福祉の現場で11年間働き
現役の児童発達支援管理責任者として、発達検査を受けた後の子どもたちや保護者の方と、数多く関わってきました。
この記事では、検査を受ける前に知っておいてほしいことを、できるだけわかりやすくお伝えします。
(そして、あまり支援者側から「発達検査を受けたら?」とは言い難いのが現状ですが)
発達検査は「診断」のためだけのものではない
まず知ってほしいのは、発達検査は「発達障害かどうかを決めつけるための検査」ではないということです。
発達検査の本当の目的は・・・
その子の得意な力と苦手な力を、客観的な数値として可視化し、今後の関わり方や支援のヒントを得ることにあります。
つまり、検査を受けること自体は
「悪いことが見つかる」ためのものではな
「その子に合った関わり方を見つける」ための材料集めということになります。
この材料集めが、のちの支援ですごく必要になってきます。
WISC検査とは何か
WISC(ウィスク)は、子どもの知的能力を測る代表的な検査の一つです。
単純な「IQの数字」だけを出すものではなく
言語理解、知覚推理、ワーキングメモリー、処理速度など、複数の領域ごとに、その子の得意・不得意のバランスを詳しく見ることができます。
例えば、「言葉の理解は年齢相応だけど、instructions を素早く処理するのは少し苦手」というように
能力の凸凹(でこぼこ)を具体的に把握できるのが、WISC検査の大きな特徴です。
この凸凹を知ることで、日常生活や学習面での関わり方のヒントが見えてきます。
検査当日は、どんなことをするのか
検査は、専門の心理士や検査者と、子どもが1対1で行うのが一般的です。
パズルのような課題、質問に答える課題、絵を見て答える課題など
いくつかの種類の課題を、1〜2時間程度かけて行います。
『テスト』というよりも、ゲームやクイズに近い感覚で受けられるよう工夫されていることが多いです。
保護者は基本的に別室で待機し、検査終了後に、検査者から簡単な様子のフィードバックを受けることが一般的です。
私も児童養護施設の職員をしていた時に同席したことがあります。
検査中は別室で待機して、終わったら検査してくれた先生から説明を受けて終わりました。
子どもは「楽しかった〜。また遊びたいな〜」と子ども自身は
『検査』ではなく『遊んだ』という認識でした。
検査を受ける前に、心の準備として知っておきたいこと
① その日の子どもの調子で、結果が変わることがある
体調や気分、緊張の度合いによって、検査結果は多少変動することがあります。
「これが絶対的な、一生変わらない数字」というわけではなく
あくまで『検査を受けた時の様子』として捉えることが大切です。
② 結果は「優劣」ではなく「特徴」として受け止める
検査結果を見ると、数字の高い・低いに目が向きがちですが・・・
大切なのは、どの力が強く、どの力がサポートを必要としているか、という『特徴』の部分です。
優劣として捉えるのではなく、その子の取扱説明書を手に入れるようなイメージで受け止めてみてください。
例を出して考えてみるとわかりやすいので、後で解説します。
③ 結果を聞くときは、遠慮なく質問してよい
フィードバックの際、専門用語で説明されて、よくわからないまま終わってしまうこともあります。
「これは日常生活で言うと、どんな場面に影響しますか?」
「家庭で気をつけられることはありますか?」
など、具体的に質問することをおすすめします。
検査結果の数値、実際どう見ればいいの?
ここでは、検査結果の数値をどう読み解けばいいか、具体例を交えて解説します。
※以下の数値はあくまで説明のための架空の例です。
実際の数値は一人ひとり異なり、個人差が大きいものです。
ご自身のお子さんの結果については、必ず検査を担当した専門家から直接説明を受けてください。
数値の基本的な見方
WISC検査の数値は「平均100、標準偏差15」という基準で作られています。目安は以下の通りです。
| 数値の範囲 | 分類 |
|---|---|
| 130以上 | 非常に高い |
| 120〜129 | 高い |
| 110〜119 | 平均の上 |
| 90〜109 | 平均 |
| 80〜89 | 平均の下 |
| 70〜79 | 低い(境界域) |
| 69以下 | 非常に低い |
大半の子ども(全体の約7割)は「90〜109(平均)」の範囲に収まるように作られています。
多少上下しても、ほとんどの子は『平均的な範囲』に入るということです。
結果の構成(全検査IQ+4つの指標)
WISCでは、『全検査IQ』という総合的な数値に加えて、4つの領域ごとの指標が出ます。
- 言語理解(VCI):言葉の知識、言葉で考え説明する力
- 知覚推理(PRI):目で見た情報を整理し、推理する力
- ワーキングメモリー(WMI):情報を一時的に覚えておき、扱う力
- 処理速度(PSI):単純な作業を素早く正確にこなす力
架空の結果例
| 項目 | 数値 | 分類 |
|---|---|---|
| 全検査IQ | 98 | 平均 |
| 言語理解(VCI) | 115 | 平均の上 |
| 知覚推理(PRI) | 92 | 平均 |
| ワーキングメモリー(WMI) | 85 | 平均の下 |
| 処理速度(PSI) | 78 | 低い(境界域) |
この結果の読み方
ここが一番大切なポイントです。
全検査IQだけを見ると「98=平均」で、一見「特に問題なさそう」に見えます。
しかし、4つの指標を見ると、言語理解(115)と処理速度(78)の間に、37ポイントもの差があることがわかります。
つまりこの例の場合・・・
「言葉で考えたり説明したりする力は平均より高いが、単純作業を素早くこなす力はかなり苦手」という
大きな凸凹(でこぼこ)を持っていることになります。
全検査IQという『総合点』だけでは、この凸凹は見えてきません。
この子の場合
「頭の中で考える力はあるのに、なぜかいつも作業が遅い」
「口では説明できるのに、テストの時間内に書き終わらない」といった
実際の困りごとと一致する結果になっていることが多いです。
押さえておきたいポイント
- 全検査IQの数値単体で判断せず、4つの指標の「差」に注目するのが、専門家が最も重視するポイント
- 数値が低い項目は「苦手」というより「サポートが必要な領域」として捉える
- 逆に高い項目は、その子の得意な力として、他の力を補うために活用できることが多い
この例で言えば、「処理速度が低め」という結果からは
◎時間制限のあるプレッシャーを減らす
◎指示を一度に一つずつにする
といった家庭での配慮のヒントが導き出せます。
検査結果を、今後にどう活かすか
検査結果は、それ単体で終わらせるのではなく、園や学校、療育の現場と共有することで、初めて力を発揮します。
「ワーキングメモリーが少し弱いようなので、指示は短く区切って伝えてほしい」というように
具体的な配慮事項として伝えることで、日常生活での困りごとの軽減につながります。
結果の共有を面倒に感じる方もいるかもしれませんが、この一手間が、その子の過ごしやすさを大きく左右します。
検査を受けることに、抵抗を感じる保護者の方へ
「検査を受けさせることで、この子にレッテルを貼ってしまうのでは」という不安を持つ方もいると思います。
しかし、検査はレッテルを貼るためのものではなく、その子をより深く理解し、必要なサポートを見つけるための手段です。
検査を受けるかどうか迷ったときは、一人で判断せず、園や学校の先生、かかりつけ医などに、率直な気持ちを相談してみてください。
まとめ
- 発達検査は「診断」ではなく、その子の得意・苦手を可視化し、支援のヒントを得るためのもの
- WISC検査では、能力ごとの凸凹(得意・不得意のバランス)を詳しく把握できる
- 結果は優劣ではなく「特徴」として捉え、疑問点は遠慮なく質問する
- 結果は、園・学校・療育の現場と共有することで、初めて日常生活に活かされる
発達検査は、その子をより深く知るための、前向きな一歩です。不安な気持ちがあれば、遠慮なく専門家に相談しながら、少しずつ進めていってください。