「療育手帳、取った方がいいのかな…」その迷い、よくわかります
「発達相談で療育手帳の話が出たけど、正直、取った方がいいのか迷っている」
「手帳を持つことに、なんとなく抵抗がある」
「取ったら、この子に『障害者』というレッテルを貼ることになるのでは・・・」
療育手帳を勧められたとき、多くの保護者の方がこうした迷いを抱えます。
制度としてのメリットは聞くものの、実際に取るとなると、気持ちの整理がつかないという方は少なくありません。
私は児童・障がい福祉の現場で11年間働き
現役の児童発達支援管理責任者として
療育手帳の取得を考える保護者の方の相談に、これまで数多く関わってきました。
この記事では、制度の基本から、現場で見えてきたリアルなメリット・デメリットまで、できるだけ本音でお伝えします。
療育手帳とは何か
療育手帳は、知的障害があると判定された方に交付される手帳です(自治体によって「愛の手帳」「みどりの手帳」などの名称の場合もあります)。
障害者手帳の一種で、これを持つことで、様々な福祉サービスや支援を、割引・優遇された条件で利用できるようになります。
似た名前の「通所受給者証」とは別物です。
通所受給者証は児童発達支援や放課後等デイサービスを利用するための証明書で、療育手帳がなくても取得できます。
療育手帳は、知的障害の程度に応じた、より幅広い支援を受けるための手帳、というイメージで捉えてください。
取得の流れ
自治体によって多少異なりますが、一般的な流れは次の通りです。
- お住まいの自治体の障害福祉課、または児童相談所(18歳未満の場合)に相談する
- 発達検査・知能検査(田中ビネー式やWISCなど)を受ける
- 検査結果や生活状況をもとに、判定が行われる
- 判定結果に応じて、療育手帳が交付される(障害の程度によって等級が分かれます)
申請から交付までは、自治体にもよりますが1〜3ヶ月程度かかることが一般的です。
療育手帳を取得するメリット
① 福祉サービスの利用がしやすくなる
放課後等デイサービスなどの利用自体は、手帳がなくても可能ですが
療育手帳を持つことで利用できるサービスの幅が広がることがあります。
自治体独自の助成制度が使えるようになるケースもあります。
② 経済的な負担が軽減される
医療費助成、税金の控除、公共交通機関の運賃割引、各種施設の入場料割引など
様々な経済的支援を受けられるようになります。
地域によって内容は異なりますが、長期的に見ると家計への負担軽減につながります。
③ 将来の就労支援につながりやすくなる
将来、障害者雇用枠での就労を考える場合
療育手帳があることで、就労移行支援などの専門的なサポートを受けやすくなります。
早期から手帳を持っておくことで、将来の選択肢が広がるという側面もあります。
④ 周囲の理解を得やすくなる場面がある
学校生活や進学の場面で、配慮を依頼する際の一つの根拠として、療育手帳が役立つことがあります。
療育手帳を取得する際に、気になりやすいデメリット・懸念点
① 「障害」という言葉への心理的な抵抗
これは制度上のデメリットというより、保護者の気持ちの面での負担です。
「うちの子に障害者手帳を持たせることになる」という事実に、抵抗を感じる方は少なくありません。
この気持ちは、決しておかしなものではなく、自然な感情です。
② 等級によっては、期待したほどの支援が受けられないことも
判定される等級によって、利用できる制度の幅は変わります。
「手帳を取ったのに、思っていたほどのメリットがなかった」と感じる方もいます。
事前に、お住まいの自治体でどんな支援が受けられるか、具体的に確認しておくことをおすすめします。
③ 再判定が必要な場合がある
18歳未満で取得した療育手帳は、年齢とともに再判定が必要になることがあります。
定期的な検査や更新手続きの負担を感じる方もいます。
「手帳を取る=障害を認めること」ではない
多くの保護者が抱く不安の根っこにあるのは
「手帳を取ることで、この子に障害があると認めることになってしまうのでは」という気持ちだと思います。
しかし、療育手帳はあくまで、その子が必要な支援を受けやすくするための「ツール」です。
手帳を持つことと、その子の可能性や将来が制限されることは、イコールではありません。
むしろ、必要な支援につながることで、その子が持っている力を伸ばしやすくなる
という前向きな側面の方が大きいと、現場では実感しています。
迷ったときは、まず「相談」から
「取るべきか、取らないべきか」を、自分だけで決めようとしなくて大丈夫です。
まずは自治体の窓口や、通っている児童発達支援・放課後等デイサービスの職員に、率直に迷いを相談してみてください。
「取ってから、必要ないと感じたら返還することもできますよ」といった、具体的なアドバイスをもらえることもあります。
まとめ
- 療育手帳は、知的障害の判定を受けた方が取得できる手帳で、通所受給者証とは別の制度
- メリットは、福祉サービスの利用のしやすさ、経済的負担の軽減、将来の就労支援へのつながりやすさなど
- デメリット・懸念点は、心理的な抵抗感や、等級による支援内容の差など
- 「手帳を取る=障害を認めること」ではなく、必要な支援につながるためのツールとして捉える