
「何度言っても、同じことを繰り返す」
「みんなと一緒に行動することが苦手」
「学校では頑張っているのに、家では癇癪がひどい」
子どものそんな姿を見て、「もしかして、発達障害なのかな?」と考えたことはありませんか?
インターネットで調べると、ASDやADHD、LDといった言葉が次々と出てきます。
読んでいるうちに、当てはまることがいくつも見つかって、かえって不安になることもあると思います。
私はこれまで、児童養護施設や放課後等デイサービスで、約10年間子どもたちの支援に関わってきました。
その中で大切にしているのは、子どもの行動だけを見て「こういう子だ」と決めつけないことです。
例えば、片付けをしない子がいたとします。
本当に片付けたくないのかもしれません。
でも、何から手をつければいいのかわからないのかもしれませんし、遊びを終えることが難しいのかもしれません。
同じ行動でも、背景は一人ひとり違います。
この記事では、発達障害の基本的な知識に加えて、家庭でよく見られる困りごとや、今日から試せる関わり方を紹介します。
読み終わったときに、「うちの子は何に困っているのだろう?」と少し違う視点で考えられるようになってもらえたらうれしいです。
1.発達障害とは?まず知っておきたいこと
発達障害とは、脳の発達や働き方に関係する特性によって、コミュニケーション、注意、行動、学習などに困難が生じることがある状態です。
代表的なものには、次のようなものがあります。
- 自閉スペクトラム症(ASD)
- 注意欠如・多動症(ADHD)
- 限局性学習症(SLD/学習障害・LD)
ただし、これらの特徴は、きれいに分けられるものではありません。
ASDとADHDの両方の特徴が見られる子もいますし、同じ診断名でも困りごとは大きく異なります。
また、得意なことと苦手なことの差が大きい子もいます。
発達障害を理解するときに覚えておきたいのは、診断名だけでは、その子に合う関わり方は決まらないということです。
発達障害は育て方が原因なの?
ここは、保護者の方に知っておいてほしい部分です。
発達障害は、親のしつけや愛情不足が原因で生じるものではありません。
「私がもっと厳しくしていたら」
「小さい頃の関わり方が悪かったのかな」
と、自分を責める必要はありません。
一方で、子どもを取り巻く環境や伝え方によって、生活のしやすさは変わることがあります。
例えば、口頭で一度にたくさん説明されると混乱する子でも、一つずつ伝えたり、写真で手順を示したりすると取り組みやすくなる場合があります。
子どもだけを変えようとするのではなく、大人が環境を整えることも大切なのです。
2.ASD・ADHD・LDの特徴をわかりやすく解説
ここからは、代表的な3つの発達障害について紹介します。
ただし、以下はあくまで特徴の例です。
当てはまる行動があるからといって、それだけで発達障害だと判断できるわけではありません。
① 自閉スペクトラム症(ASD)
ASDでは、人とのコミュニケーションや相互的なやり取りに難しさがあったり、興味や行動に独特のパターンが見られたりします。
例えば、
- 急な予定変更が苦手
- 言葉を文字どおりに受け取りやすい
- 特定の遊びや物に強い関心を持つ
- 音や光、触られる感覚などに敏感
- 相手とのやり取りで戸惑うことがある
といった姿が見られる場合があります。
家庭でこんなことはありませんか?
いつもはお風呂に入れる子が、突然「今日は先にご飯だよ」と言われた途端に怒り出す。
大人からすると、ほんの少し順番が変わっただけに思えます。
でも、本人にとっては「いつもどおり」が崩れたことが、大きな不安につながっているのかもしれません。
そんなときには、
「今日は先にご飯を食べて、そのあとお風呂に入るよ」
と、変更した予定を具体的に伝えてみます。
言葉だけではわかりにくい場合は、写真や予定表を使う方法もあります。
大切なのは、予定の変更を必ず受け入れさせることではありません。
本人にとって何が負担になっているのかを考え、安心できる方法を探すことです。
② 注意欠如・多動症(ADHD)
ADHDでは、不注意、多動性、衝動性などの特徴が、生活の中で困りごとにつながる場合があります。
例えば、
- 忘れ物やなくし物が多い
- 一つのことに注意を向け続けるのが難しい
- 順番を待つことが苦手
- 思いついたことをすぐに行動に移してしまう
- 複数の指示があると途中でわからなくなる
といった姿です。
家庭でこんなことはありませんか?
朝、お母さんが、
「着替えて、歯を磨いて、ランドセルを持ってきて!」
と伝えたとします。
子どもは着替え始めたものの、途中でおもちゃが目に入り、遊び始めてしまいました。
大人はつい、
「また遊んでる!何回言えばわかるの!」
と言いたくなるかもしれません。
でも、本人はやるべきことを忘れてしまったり、目に入ったものに注意が向いたりしている可能性があります。
そんなときには、
「まずは靴下を履こう」
と、一つだけ伝えてみます。
終わったら次の行動を伝える。
必要なら、朝の支度を写真やイラストで確認できるようにします。
もちろん、これだけですべてが解決するわけではありません。
ただ、「何度も注意する」以外の関わり方を考えるきっかけになります。
③ 限局性学習症(SLD/学習障害・LD)
限局性学習症は、読むこと、書くこと、計算することなど、特定の学習領域で持続的な難しさが見られる状態です。
知的な能力全体に同じような困難があるとは限りません。
例えば、
- 文字を読むことに時間がかかる
- 文字の読み間違いが多い
- 書き写しに強い負担を感じる
- 数の理解や計算でつまずく
といった姿があります。
家庭でこんなことはありませんか?
宿題を始めても、漢字を数文字書いただけで手が止まってしまう。
「もう少し頑張ろう」と伝えても、嫌がって泣いてしまう。
そんなとき、やる気だけの問題だと決めつけないことが大切です。
文字の形を思い出すことが難しいのか。
鉛筆を動かすことに負担があるのか。
書く量が多くて疲れてしまうのか。
まずは、どの部分が難しいのかを確認してみます。
必要に応じて学校と相談し、書く量や教材、学習方法を調整することも選択肢になります。
頑張らせることと、学びやすくすることは、必ずしも同じではありません。
子どもが理解しやすい方法を一緒に探していきたいですね。
3.「発達障害かも?」と思ったときに知ってほしいこと
ここまで読んで、
「うちの子にも当てはまるところがある」
と感じた方もいるかもしれません。
でも、落ち着きがない、予定変更が苦手、忘れ物が多いといった行動は、発達障害がない子どもにも見られることがあります。
疲れや睡眠不足、不安、生活環境などが関係している場合もあります。
だからこそ、行動を一つ見ただけで、発達障害かどうかを判断することはできません。
家庭と学校で様子が違ってもおかしくない
「学校では問題ないと言われるのに、家では癇癪がひどい」
そんな相談もあります。
子どもの様子は、環境や相手、求められる活動によって変わることがあります。
学校で頑張っている分、家庭で疲れが表れている可能性もあれば、家庭特有の困りごとがある場合もあります。
どちらかの姿だけが本当の姿というわけではありません。
家庭と学校、それぞれで何が起こっているのかを整理することが大切です。
診断がなければ支援を受けられないの?
診断がない段階でも、学校や自治体の相談窓口などで、子どもの困りごとを相談することはできます。
一方、福祉サービスなどの利用条件は制度や自治体によって異なります。
そのため、診断の有無だけで支援を諦めず、まずは相談先で確認してみてください。
診断は、必要に応じて医師が発達歴や生活状況などを総合して判断するものです。
発達検査や知能検査だけで、発達障害の有無が決まるわけではありません。
4.家庭でできる関わり方|まずは3つから
発達障害について調べると、さまざまな支援方法が出てきます。
でも、全部を一度に試す必要はありません。
まずは毎日の生活の中で、子どもが困りやすい場面を一つ選んでみましょう。
① 指示は短く、具体的に伝える
「ちゃんと片付けて」
と言われても、何をどこに片付ければよいのかわからない子もいます。
そんなときは、
「まず、車のおもちゃを箱に入れよう」
と具体的に伝えてみます。
それでも難しい場合は、最初の一つを大人と一緒に片付けてみてもよいでしょう。
② 次に何をするのか、見通しを伝える
好きな遊びから次の活動に移ることが難しい子には、事前に予定を伝える方法があります。
「あと10分でご飯だよ」
「この遊びが終わったらお風呂に入ろうね」
時間だけではわかりにくい場合は、タイマーや写真などを使う方法もあります。
ただし、予告をすれば必ず切り替えられるわけではありません。
遊びの区切りや、その日の疲れ具合も見ながら考えていきます。
③ できないことだけでなく、できていることも見る
子どもの困りごとが続くと、どうしても苦手な部分に目が向いてしまいます。
でも、好きな遊びでは集中できる。
得意なことなら自分から取り組める。
安心できる大人には気持ちを伝えられる。
そんな姿も、子どもを理解するための大切な情報です。
「どうしてできないの?」
と考えるだけではなく、
「どんなときなら取り組みやすい?」
と考えてみます。
そこに、その子に合う支援のヒントが隠れていることがあります。
5.【家庭で使える】子どもの困りごと整理メモ
「困っていることはあるけれど、何から考えればいいかわからない」
そんなときに使える簡単なメモを用意しました。
例えば、朝の準備が進まない場合です。
| 確認すること | 記入例 |
|---|---|
| どんな場面? | 朝、学校へ行く準備をするとき |
| どんな行動? | 着替えの途中で遊び始める |
| その前に何があった? | 大人がまとめて指示を出した |
| 試してみること | 一つずつ声をかける |
| 子どもの反応 | 靴下は履けたが、次の行動では止まった |
こうして整理すると、「言うことを聞かない」という大きな悩みが、少し具体的になります。
記録するときは、できなかったことだけを書かなくても大丈夫です。
「今日は自分から靴下を履けた」
「一緒に始めると片付けられた」
そんな小さな変化も残してみましょう。
一度の記録で原因がわかるわけではありませんが、支援方法を考えたり、学校や相談先に状況を伝えたりする際の手がかりになります。
6.児童指導員として大切にしていること|子どもの行動の奥を見る
私はこれまで、児童養護施設や放課後等デイサービスで、さまざまな子どもたちと関わってきました。
子どもの支援では、「座っていられない」「片付けられない」「集団に入れない」など、できていない部分が目立つことがあります。
もちろん、集団生活にはルールもありますし、危険な行動を止めなければならない場面もあります。
でも、私はその行動だけを見て判断しないようにしたいと思っています。
例えば、片付けの時間になっても動かない子がいたとします。
そこで何度も「片付けよう」と伝える前に、一度考えてみます。
遊びを終えることが難しいのかな。
片付ける場所がわからないのかな。
それとも、今日は疲れているのかな。
理由は一つとは限りません。
だからこそ、声かけを変えてみたり、手順をわかりやすくしたり、少し休憩を入れたり。
子どもが取り組みやすくなる方法を考えます。
支援しているつもりが、いつの間にか「大人の言うことを聞かせること」が目的になってしまわないように。
これは、私自身も大切にしていきたいことです。
子どものできないことを探すより、どうすればできるようになるのかを一緒に考える。
発達障害の有無にかかわらず、そんな関わり方を続けていきたいと思っています。
7.発達が気になるときは、どこに相談すればいい?
「家庭で工夫してみたけれど、なかなかうまくいかない」
「学校でも困っているようで心配」
そんなときは、一人で抱え込まず、相談してみてください。
相談先には、次のようなものがあります。
学校や園
担任の先生や、学校に配置されているスクールカウンセラーなどに相談できます。
家庭と学校での様子を共有することで、困りごとの背景を考えやすくなります。
自治体の発達相談・子育て相談窓口
自治体のこども家庭センター、保健センター、発達相談窓口などでも相談できます。
窓口の名称や対応範囲は地域によって異なります。
医療機関
発達についての医学的な評価や診断が必要な場合は、小児科や発達を専門とする医療機関などに相談する方法があります。
最初から検査や診断を希望する必要はありません。
まずは、子どもの生活で困っていることを伝えることから始めてみましょう。
相談するときに準備しておくとよいこと
次の5つを簡単に整理しておくと、相談の助けになります。
- 今、一番困っていること
- どんな場面で起こるのか
- 子どもの好きなこと・得意なこと
- これまで試した関わり方
- 相談で知りたいこと
すべてを詳しく書く必要はありません。
「何から話せばいいかわからない」という気持ちから、相談を始めても大丈夫です。
8.よくある質問
Q.発達障害の特徴がいくつか当てはまると、診断されますか?
いいえ。特徴がいくつか当てはまるだけで、発達障害と判断することはできません。
発達の経過や日常生活への影響などを含めて、専門家が総合的に評価します。
Q.発達障害は成長すると治りますか?
発達障害は、単純に治る・治らないという考え方だけでは捉えられません。
成長や経験、環境調整、支援によって、困りごとが軽くなったり、本人に合う対処方法が身についたりすることがあります。
一方で、大人になっても特性や支援の必要性が続く人もいます。
Q.診断がなくても学校に配慮をお願いできますか?
診断がない段階でも、困っていることについて学校に相談できます。
具体的にどのような対応が可能かは、本人の状況や学校の体制などを踏まえて話し合うことが大切です。
Q.親はまず何をすればいいですか?
最初から発達障害かどうかを判断しようとせず、子どもが困っている場面を一つ整理してみてください。
そして、家庭でできる小さな工夫を試しながら、必要に応じて学校や専門機関に相談しましょう。
9.まとめ|発達障害を知ることは、子どもの見方を増やすこと
発達障害について知ると、これまで「わざとやっているのかな」「どうしてできないんだろう」と思っていた行動に、別の理由があるかもしれないと気づくことがあります。
ただし、すべての困りごとが発達障害によるわけではありません。
大切なのは、診断名だけで子どもを判断しないことです。
- どんな場面で困っているのか
- 何が得意で、何が難しいのか
- どんな関わりがあると安心できるのか
そんなことを、一つずつ考えていきたいですね。
そして、困ったときは周囲の人や専門家に相談することもできます。
子どもを変えることだけを考えるのではなく、子どもが過ごしやすくなる方法を一緒に探す。
この記事が、そのきっかけになればうれしいです。
参考資料
- 国立障害者リハビリテーションセンター「発達障害情報のポータルサイト|特性の理解」
- 同サイト「子どもの抱える困難さに応じた指導・支援」
- 同サイト「医療受診の意義と診断までの流れについて」
こども家庭庁「相談窓口」
※この記事は発達障害についての一般的な情報と、筆者の支援経験に基づく考え方を紹介するものです。診断や個別の医療的判断に代わるものではありません。
この記事を書いた人|晴れパパ
児童養護施設で6年間、放課後等デイサービスでの支援に携わり、児童指導員として約10年の経験があります。現在は放課後等デイサービスの管理者兼児童発達支援管理責任者として、子どもの発達支援や保護者支援に関わっています。
ブログ「おてんききっず」では、子どもの気持ちを理解する視点と、家庭で試せる関わり方を発信しています。